「そうそう、芹沢鴨が亡くなりはったんやろ?いつやったっけ……2ヶ月くらい前やろか」
「ああ、仕方ないやろ。以前(まえ)、浪士の首を晒して大坂を歩き回ったんやで?!人道外れとると思うわ」
「もう安心やねえ。あ、そういえば新選組が今度大坂に来るっちゅう話や。変なことせえへんとええんやけど」
新選組。
すぐに前川の顔が浮かんだ。
忘れようと決めたのに、まだ日が経っていないからだろう――はっきりと思い出される彼の顔。
振り払うように首を振って、表情を作った。
「そうですね」
「京では良い事してはるらしいし、もう大丈夫なんかね」
「良いところしかない集団は存在しませんよ。誰かの正義は、誰かの悪事ですから」
芹沢が新選組の悪だった。悪がなくなっても、新たな悪は生まれる。だから、安心なんて出来ない。
しちゃ、いけない。
人と話したのち、三味線を背に歩きだそうとすると、聞き覚えのある声が哀音を呼んだ。
「お姉ちゃん!」
