彼の言うことは哀音を思ってのことで、哀音を守るのならば止めない方が――新選組の邪魔になった時のみに対処する方が良いのだろう。
前川も、迷っている。止めていいものか、悩む。
己の判断で生きる道を変えてしまうことを、平気で出来るのかと。自分が恵まれているからそんなことが言える、出来るのだたと言われれば返す言葉なぞどこにもないだろう。
―――だが。
「彼女自身が死ぬ前に、誰かが止めてあげるべきです。たとえ恨まれようとも。
私は新選組隊士、治安を守るために動かざるをえない」
はっきりと。
迷いを感じさせないよう努めた。
小椋はしばらく沈黙した。それからゆっくりと話した。
「愛音に会う機会があれば、お知らせします。ただ、妹に会うのは遠慮してもらえまへんか。
傷を深める行為はしてほしゅうない。
わてにとって、大切な人なんや、理解しておくれやす」
「………、分かりました。お時間を頂き、申し訳ない。ありがとうございました」
「前川はんは、しばらく京にいらっしゃいますか」
「少ししたら大坂(おおざか)に向かいます。もし哀音に会ったら、大坂(今の大阪)に届けを頼みます」
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