暖かな日差しを浴びながら、明るい道を歩く。
寒さは和らぎ、朝や夜は多少の寒さは残るものの、日中は暖かい。
小椋の営む、衣の大店が見えてきて、前川は足を早めた。
入口から中を覗くと、50過ぎたくらいの女性がこちらを見、近づいてきた。
「何かお探しどすか?」
浅葱色の羽織を纏っていない前川はただの浪士にしか見えない。
お客だと思ったのであろう、小椋に用があると伝えようとしたところで奥から、彼が姿を現した。
「前川はん、よういらっしゃいました」
挨拶をすると、女はそそくさと衣の整理を始めた。
「ここで話すのは……どこかで話しましょう」
「それなら良い所があります、小椋さん」
小椋を連れ出して、ある場所へと歩みを進める。
前川が小椋に文を送ったのは7日前。哀音がいなくなってから、何か手がかりはと思い、記憶を辿れば小椋が浮かんだ。
それからの行動は決まっていて、島原にいるという話を耳にして文をしたため、渡した。
そして今日、会うことが決まり歩いているわけだが。
