「その曲は、未完成ではないんか?」
「―――未完成の曲をお客様に聴かせることは、許されません。お客である義春様がそれでも求めるのなら、私の手で完成させて聴いてもらうまでです。
それでも完成しない曲ではありますが」
「完成しいひん曲?」
花は撥を強く握って、胸へもっていった。
肩が震え、必死にそれを隠そうと笑顔を取り繕うとする。
小椋は花を見ながら眉根を下げる。
この質問は酷だったかもしれない。
「義春様は何故、そのような事を知っておられたのですか」
「確信に変わるまでは、言えへん。……言ったら、傷つくやろう……」
「………今の曲は、母の曲です。幼い頃、私は姉とともに母に三味線を習っておりました。
一番初めに弾けるようになったのは、母の曲で…でも」
そこできり、花は顔を上げた。
