腕から離れ、撥と三味線を手にする。 未完成の曲を求めるのは小椋のみ。小椋にしか聴かせていない、この曲は。 息を吸って撥で弦をはじく。 乾いた音だけが空間に響く。 ―――ベンッ… 小椋はただ音に耳を傾けた。花も想いながら三味線を奏でる。 途中で終わることなく、その曲は最後をむかえた。 「ありがとうございました」 ゆっくり頭を下げる。 「………花」 小椋が呼ぶと花は俯きながら、返事をした。