「哀音は独りでしか、生きられない。私は私の道を行く」
「哀音は……人斬り以外の生き方を見つけるべきだ…!」
頭を振って、手を開いて撥を見せた。
不自然な斑点が浮かぶ撥を、指で触る。
「哀音は憎しみと哀しみの塊」
『ねえねー!』
「全てを失い得たものは、復讐の力のみ」
『三味線を上手に弾くのね』
「後戻りするには、遅すぎる」
『早くねるんだぞ』
撥を握り、三味線を手に取る。
構えて一音、鳴らした。
―――ベンッ
哀しい音しか出さなくなった、三味線。
「さようなら。どうぞ、お元気で」
―――*―――
