「――!」
彼の目が大きく開かれた。
言葉が出て来ず、ただ驚きを見せる。
「ここで私を殺し、屯所へ戻り報告して下さい。哀音を殺し、戻りました、と。
そうすればあなたが咎められることはありませんし、私が人を殺めることもありません。新選組としては荷物が減り、手柄はとれる。
良い案だと思いませんか」
微笑みを浮かべてゆっくり話す。
信じられんと言わんばかりに目を見開いたままこちらを見つめる前川。
これが一番良い決断だと思った。こうすれば、哀しみはなくなる。
哀音(人斬り)として生きるために努力してきた8年間は無駄になってしまうけれど、最良の選択なのだ。
「………それで良いと、思うのか」
「はい。この状況ならあなたも私を殺せるでしょう?」
己の身が一番可愛いに決まっている。
この状況なら二つに一つ。哀音を殺す選択に迷いなどいらないはず。
