「私が、三味線を弾くのは、復讐に使えるからでした。人を殺めるのも、全ては8年前が始まりで、それは今も変わらない。 でも芹沢ではないと分かってから……憎む相手が抽象的すぎて、困惑しています。
私はただ一人を殺すために、何十人と手にかけてきました。それでも芹沢を殺すためなら何だって背負ってやると思って、短刀を振るった。
それが長州藩というものになれば、ただの人殺しと変わらない行動を、私は選択することになる……!長州藩士をただ斬る。それは、私の信念とは違う……!」
憎む感情だけで、8年間生きてきた。
その中で、自分だけでこの悲しみはお終いにしたいと思っていた。
残酷な哀れな人斬り哀音が二度と出ないようにと、切に願いながら命懸けで短刀を振るった。
それが崩れたとき、哀音はどう生きていけばいい?短刀はもう振るえない。
人の死を背負えないから。人の哀しみ、恨みを背負えなくなるから。
手が震え、滲む視界に苛立ちを覚える。
「私が死ねば、新たな哀しみは生まれなくなる。背負えない死が、なくなる」
顔を上げて前川を見つめた。
「ここで私を、殺せ」
