「近藤局長は腰が低くて優しい方だ。芹沢局長とは似てもにつかない。
それがすべての答えだったのだと気づいたのは、芹沢局長が副長に刺された時だった」
『それでいい』確かにそう言って、笑さえ浮かべていた。
その言葉を聞いた瞬間、全てが繋がってたまらない気持ちになった。
悪人ではなかったのだ。ただ新選組を思い、恨みさえも背負うほどの強い人だった。
「副長も気づいていたと思う。もう後には引けないから、やるしかない、と」
「……全く、迷惑な人ですね。でも、憎んで良かったかもしれない」
人の人生を掻き乱すだけ掻き乱しておいて。
それでも、芹沢鴨という1人の人間を見、憎悪はさほどなかったからそう思うのだろう。親が殺される原因を作った事実は変わらず今も憎いけれど、真実を知れたことにほっとしている方が大きい。
「哀音……」
「さてと、これでもう終わりですね。芹沢鴨を見極めるのも本人がいなければ出来ませんし」
「また、人を殺すのか」
「止めますか?無理でしょうけれど。刀の腕なら負けません」
懐に手を入れて構える様子を見せる。
哀音は哀音の道を、前川は新選組の道を進むべきだ。
これ以上前川が新選組を裏切る行為をする必要はないし、単独行動をすればする程、前川の首は絞められる一方だろう。
お互いの利益にならない行動はやめた方がいい。