「私は、芹沢鴨を名乗る長州藩士に、親を殺された。長州藩士と知るまで、お前が憎くて…殺したくて…そのために人斬りになった」
まるで独り言だ。
けれど、"哀音"が生まれた理由を、芹沢に知っておいて欲しかった。
芹沢がしてきたことは新選組にとっては正しいかもしれない、だが民にとっては間違いであったかもしれない。それを、伝えたかった。
「私は人斬りになったことを後悔したことは、ない。それでも、自分の正義は他人の悪事。
誰であれ、それは変わらない」
「当たり前のことを」
「これからも、長州藩士を斬る。仇がとれなくとも、短刀を振るう」
風が多数の人の気配と騒がしさを知らせる。
時間はもうない。前川も限界だろう。
立ち上がり、歩き始める。
「新選組は、面白い」
背中にかけられた言葉にふっ、と笑う。
「そして誠の旗のもとに集ったあやつらは、けして迷わん。お前も迷うな」
「それこそ、当たり前のことだ」
迷いながら短刀を振るい人の命を奪うことは、師匠からも禁じられていたし、自分でもしないと決めている。
芹沢がいいたいのはこれからのことなのだろうが。
互いに笑みを残して言葉を交わしたその日から数日後
前川から報告を受けた。
芹沢鴨が幹部に粛正された―――と。
