-アイネ-







「粛正したか」





「…はい。芹沢局長はお一人ですか?」







芹沢鴨―――この人が。





親を殺した人とはやはり、違う。風格も目つきも。
8年でこんなに変わるとも思えない。確信はないけれど芹沢ではないと、直感でそう思った。










「木津川の方は全て片付いた。…そこの女が、哀音か」








芹沢の威圧的な目が、哀音を捉える。






血のついた着物にころがる死体。愛音だと言いくるめることは難しく、言ったところで無駄だろう。





身構えるのをやめ、小さく頷く。







「この程度で傷を負う者に殺された奴らは、憐れだ」




「そうですか」





「………おい、お前。土方たちが来る。足止めをしてこい」






「ですが…」





哀音に目をやる。




それに気づいた芹沢が鼻で笑う。








「この女が捕まっても良いというなら、構わないがな」






「!承知しました」









芹沢がやってきた方向へ走って――暗闇に姿を消した。






それを見送ってから、芹沢は黙って哀音を見つめてくる。



彼が人払いをしてまで話す時間を作ったのだ、新選組が来る前に去らなければならないうえに話をするとなると、時間はない。








「お前は何者だ、芹沢鴨。薩長と繋がっているのか」







「薩長と繋がりはない。何を勘違いをしているかは知らぬが、ある程度の情報はあの男から得ているはずだ」









「……新選組が、大切か」












「…………、あの者達には全てが足りなかった。口ばかりで、本物の武士には程遠い。
形ですらも武士になれぬのなら、生き方、心で武士になれば良い。

だが、味方すらも討てぬ、脆弱な集団なら潰れて当然。人を守ることも、主を守ることも、武士になることも出来るわけなかろう」