「哀音」
「何ですか」
雪の上に座り、三味線を構えて音を鳴らす。
―――ベンッ
肩についた雪を払い近寄ってくる彼には目もくれず、ただ弦を弾く。
「足と耳、怪我をしているだろう。簡単な手当ならする。見せてくれ」
「自分で出来ます。貴方には関係ないでしょう?」
「礼だ。宮田のことと、針をはじいた分。
きちんと返す、そういった」
腰に提げたひょうたんの形の水入れを手にし、足を出すよう促す。
三味線を横に置いてから、足を見せると水をかけられた。
「解毒剤はっと……」
袂を探り、懐紙に包まれた粉を取り出し哀音に渡す。それを受け取り飲んでいる間に、足に何かを塗り始める。
「何故1人でここに」
「宮田が情報を得たと副長に報告したのが、気になった。木津川にいるというのなら監察方が気づいてもいいはずなのに、宮田が知っているのは不自然でな。もともと間者だと疑っていたが。
厠へ行くと行ってから姿を消してから、やっと確信した。門を避けて厠の方から姿を消したとなれば、方向は限られる。
それで、探そうと動いた訳だが」
そこで1つ息をついた。
足に包帯を巻く様子を、ただ見つめる。
「芹沢局長に、見つかった」
