「そういやぁ、一度も稽古一緒にやらなかったな。これが最初で最後の稽古か」
互いに走り出し、刃を交える。
何故前川が1人、ここに来ているかは後で聞くとして、哀音は壁にもたれかかり座る。
色が変わっている左ふくらはぎから毒を抜こうと、強く押さえる。
手の震えからすでに毒はまわっている。少しでも出して回復を早くしようと、痛みに耐えながら強く押さえた。
「宮田、何故お前が間者なんだ……!」
「疑ってたくせして、そういうこと言うか」
―――かぁぁぁぁん!!!
激しい音が鳴り響く。
「信じたく、なかった」
一旦間合いをとって、構えなおす。
前川にしては珍しく、感情をむき出しにして刀を振るっている。やはり、気を許していた相手と戦うのは辛いものがあるのだろうか。
「誠の旗のもとに集った仲間だと、信じたかった。間者だと分かった今でも、そう信じたいと思っている。頭では違うと分かっているのに、心で否定する。
だが…」
前川はゆっくり刃を下げた。腰を低くして深く息を吐いた。
以前と構えが違い、哀音は前川の手に視線をやる。
前川の剣は川の流れのよう。決められた通りにすらりとやってみせる。
