脇差しに刀をさしている男らーーー武士のみ。
争いをやっている者にとって面白みのある曲と言われるこの曲は、江戸にいた頃もよく奏でた。残るのはやはり、武士、武士風情、まれに変わった人だけ、
ふと男を見るとうっすら笑みを浮かべて汗も同時に浮かべている。
ーーーーベンッ
最後の1音を鳴り終えると、口元に笑みを見せて。
「最後までありがとうございます。殿方はここら辺りの方ですか」
「あぁ、そうだ」
語尾が上がるのは京の訛りでもあるが、少し違う。幼い頃から離れないあの訛りは京のものではなかったのか。
撥を持つ手に力が入る。
「私、京に来て日が浅く何の知識も御座いません。ただ、三味線を弾くのみ。京を知ってらっしゃる殿方に京について教えて頂きたいものです」
「京をあまり知らぬか。それはいかんのう…京にいる者は京の事を知っておかねば、ここで演奏する資格などありゃせんのだからな」
「恥ずかしい限りです」
「演奏も良いうえに美形だ。宮森先生も喜んで下さるだろう」
「そうでも、女子(おなご)を入れるんは危ない橋じゃき」
「いざとなれば」
男が刀を傾けると、皆頷いた。
