仲間の方が去っていき、男は歩き始める。
何の迷いもなく、哀音は男の跡をつける。
歩いてしばらくして、新選組の屯所に着いた。このまま戻るだけか或いは。
前川といつものやりとりをする場所まで走り、耳を澄ました。
「宮田、空いてるか」
「どうした、田中?」
「稽古に付き合ってくれねぇか」
「………今日はおかず一品な、負けねぇよ」
「またやるのか」
宮田と田中と呼ばれた先日の男と――前川の声がした。
「毎回宮田に負かされるんだ、今日こそは勝つぜ」
「稽古といいながら勝負とはお前たちらしいが、ほどほどにな」
「1番組隊士の腕があがると思えばいいことだろ?行こうぜ」
笑い声が少しずつ遠ざかっている。稽古をするなら寺だろうが、そんな所で話はしないはず。稽古というのが合図ならば、場所は2人をつけないと分からない。
