-アイネ-




1日のほとんどを外で過ごすせいか、手は冷えきり撥を握る力も若干弱くなっている気がする。寒さには弱くない方だし、弱くならないよう鍛えてきたつもり。





それでも京の冬はこたえるものがあって、京の冬に慣れるまではあとひと月はかかるだろう。












『おかあさん、寒いよ』



『こっちにおいで』




『おかあさんの布団、あったかい』








―――ベンッ!!!








脳裏で響いた会話を打ち消すように強く鳴らした。









最近、昔の記憶が蘇ることが多い。そして哀音に迷いをもたらす。








母や父がこの姿を見たらなんと言うだろう。何度も何度も考えた。それでも、哀音より生きる道は、それしかなかったのだ。








「迷いは、いらない」










必要なのは、憎しみだけ。錆びた鈴に手をあてて、思い出したくないあの日を鮮明に思い出す。















「……っ」









すべてが赤に変わった瞬間、彼女は力を求めた。









人を守れる強さでも、前に進む勇気でもなく。






たったひとつ、復讐出来る力を。