「殺さなかったのは、わての前やからか」
「この人達がただの長州藩士なら殺しています。この案件が私だけのものなら。
新選組間者が関わるなら、これは私と新選組に裁く権利がある。一人で決めてはならない」
「新選組に協力するんか」
「協力なんてまっぴらです。恩を売るだけ。そして自分達がどれだけ無能か、知る機会を与えるのです」
そう答えてから考える。
哀音が女だと気づかれている以上、広まらないように口封じをする必要が出てきた。
男だと信じられていたから女だと安心して人は油断していた。
今は哀音の弱みを握ったと優勢だと信じて笑っているだけだろうが、1週間以内にけりをつけなければ哀音は女と知られると思っていいだろう。
女だと明らかになったところで、哀音が動けなくなるわけではないけれど、芹沢に近づくのに不便だ。
