10番組の隊士が哀音は女だと報告したのか。実に面倒くさい。
ただ誤魔化さなければ。ここには小椋がいる。
「愛しい音だと、報告受けなかったのですか?人違いですよ」
「短刀とその体使いを見ればわかるさ。俺たちは武士なんでね、誤魔化されねぇよ。これから殺す相手を間違えたらそらもう大変だ」
「ならば何故、私ではなくこの方を襲った」
間違いなく小椋を手にかける気だった。
哀音だと分かっていて何故。
「それは俺も聞く。何故岸川さんを襲ったんど」
訛りに長州の人間と判断出来る。
「それに答える前に。…逃げて下さい、早く」
小椋にやっと声をかけると、はっとしたように立ち上がり逃げようとする。
「早う答えるんじゃ!!!」
男が声を荒らげた。
驚いて足が止まるのを見て、哀音は答える。
「長州の人間に恨みがあるから。手がかりを得るうえで殺めたわ」
「殺す必要がどこにあった!?」
「………連帯責任って、知ってますか?」
「なら、俺らが襲う理由もそれで文句はなかっとやろ!!」
少し離れた小椋に、陰や闇から姿を現した男達が刀を向ける。
