突然のことに反応が遅れたが、刃がぶつかりあって音をたてる。




――かぁぁんっ!




島原大門の門番が門を閉めた。時間には少し早いが安全を考えれば当然の処置だ。


島原大門の明かりが消える寸前、哀音が気持ち引いたため顔がみえた。







顔が分かったのは有難い。




短刀で相手を押し返すと、相手が間合いをとった。







手を引かれたことによって体勢を崩した小椋は転んだがすぐに哀音の背を見つめた。自分の知っている愛音ではないと思った途端、動けなくなる。








頭を支配するのは恐怖。











「良いのですか?建前は新選組の隊士なのに町人を襲って」









「知っているのか」









後に入った方の男の1人だ。
ゆすりをかけるために新選組の名を出したが当たり。
となれば間者か。






「評判を落とすのにはいいのでしょうけど、隊士としては咎められますよね。間者としては困るのでは?」





「哀音がやったことにすればいい。ここで大きな声を出せば俺は隊士。町人を守るために哀音とやりあってると思われる。哀音が女だと知ってる人間は少ないだろうがこれを機に皆女と改めて思い直すだろうな」




不気味な笑みを見せてから、低く笑う。