――ベンッ…ベベンッベンッ…
調節をしながら大門をくぐっていく人に目をやると、物静かな男が目に入った。
その数刻後、二人の男がくぐっていく。まだ入るには早い時間で、こそこそ話しているのがどうも気になった。
演奏を始めて一刻二刻と経っても男たちは出てくる様子はない。
その間に島原大門は賑わいを見せて哀音の周りにも人だかりができていたが深夜―――島原大門が閉まる時間が迫るというところで皆帰路へついていった。
大門では夢を売る者と買う者が別れを惜しみながら背をむける。
お見送りは店の前で済ます人もいれば大門までという人もいる。
その中堂々と門を出てきた人物――芹沢に気づいて三味線を背にした。
周りにいるのはいつもの取り巻きか、煽てている様子がうかがえる。
後を追おうと歩き出そうとしたが。
