「どうして、私に?」




「おばあちゃんがね、椿の簪をしたお姉ちゃんにこれをあげてって。おばあちゃん足が悪くて歩けないけど、お礼がしたいからって」









女の子はそう言ってから哀音に包みを近づける。甘い匂いが鼻をくすぐり、包みを開けると中には団子が2本、入っていた。






足が悪いと言っていたから、先ほどのおばあさんの孫だろう。









哀音は2本あるうちの1本を、女の子に差し出した。









「持ってきてくれたお礼。私は1本でいいから、食べな」








「……ありがとう、お姉ちゃん!」









躊躇ってから受け取り、彼女は手を振って去っていった。無邪気で可愛らしい子は、楓を思わせた。





甘い団子は京の味付けのせいか上品で、思い出を想うには足りなかったけれど、口の中にある1つの団子にを噛み締めて残りを包んだ。











雪がちらちらと降り始める。まだ明るい太陽に照らされて美しく輝く。










雪は、残酷だ。どんなに哀しくても色が現実を突きつけ冷たさが頭を冷やす。







恐ろしいほどの静けさを連れてやってくる白は、残酷で哀れで。






掌に雪をのせて、心の中で問う。






雨になれなかったおまえは、すぐに溶けてしまう。それを恨んだことはないのか、と。









何も答えぬ雫となった雪を払って島原大門へ向かう。日が暮れれば人で賑わう場所はまだ閑散としていて、東側に腰をおろすと弦を触って音を確認した。