そう思いながら隊士を盗み見ると、ひどく睨んだ人が居た。
珍しそうに見られることや、哀音だと警戒されたことはあっても、睨まれることは初めてだ。
男の顔を覚えながら、何事もなかったかのように言葉を交わす。
「芹沢さん、でしたっけ。昼に見かけなくなりましたね」
「今日は島原で偉いさんと話してる」
「静かで助かります」
複雑な笑みを返す原田に別れを告げて、新選組屯所近くまで足をのばした。
上で結い上げた髪に、椿の簪を差し紺の素地に白い花が咲く。
華やかな着物は哀音によく似合っていた。
屯所の裏で、三味線を構えて奏でる。
―――ベンッ、ベンッ、ベンッ
3つ、音を鳴らすとそれ以上は鳴らさない。しばし時が経つと、石をぶつからせた音が響いた。
かちっ、かちっ、かちっと3つ。音を聞き届けてから隣の寺にやってきた。
誰もいない境内は新選組隊士の稽古に使われ、それ以外はあまり来ないと聞いている。
新選組が嫌われているせいか子供も来ないのだそうだ。
