芹沢鴨を見極める――それは、価値のあることかなんて分からないことでもある。
それが手を組むという意味を含んでいることも、わかっていた。
「長州の者に対して恨みを持つのであれば、目的はどうであれすることは同じ。互いに利益はある」
「……そうですね…」
ひとつの分岐点。ここで受け入れるか否か。
――からんっ、からん………
胸にある錆びれた鈴が音をたてた気がした。
楓、あなたは何と言う……?
そっと鈴に手を当てゆっくり息をする。
新選組とすることは同じ。ならば行動を共にした方が情報面を考えて呑む方が良い。だが抵抗があった。今まで憎んでいたものと手を組むなんて。
父や母、楓、師匠達を裏切るのではないかという不安。
"哀音"にそんな感情は必要ないのに――ぐるぐると渦を巻いて惑わせる。
「覚悟を決めろ」
問うた者が、惑わされるなと。どんなことも受け入れる覚悟を決めろ、と。
前川の瞳はもう揺れない。彼は、決めている。