「哀音…?」





「私、は……芹沢があの訛りの持ち主だと、思って……いました。芹沢に、私の親は殺され、妹は行方知れずになりました」








独り言のように口から出る言葉。落ち着けと目を閉じて、手に力を入れた。





「!?…局長が、人を殺した…?哀音の親は武士か?」








「いいえ、ただの町人です」








自らを芹沢鴨と名乗り、容赦なく人を斬り捨てる。





脳裏にこびりついて消えない哀しい記憶。










「訛りを、持っていました。だから私は芹沢が裏切り新選組という組織を育てているから、長州が目の敵にしていると思っていたのです。人を斬る時は、訛りで判断をしていました」










「……哀音、芹沢局長ではないかもしれぬ」












前川はぎゅっと強く握りこぶしを作り、哀音の目を見つめた。


哀音は心の中にある戸惑いを隠して見つめ返す。