「………有難いな。全て話してくれるのだろう?」
「貴方があのことを話してくれるという前提のもとですよ。貴方がくれた情報に値する情報をお話します」
芹沢鴨の手駒でないという証拠はない。だからこそ、無条件に全てを話すことは出来ないのだ。
前川が妥当だろうな、と呟いて笑みを見せる。
「新選組内に間者がいると密かに騒がれている。間者がいれば、薩長(薩摩藩と長州藩のこと)に情報が流れる可能性があるということで、重大なことだ。何人かは知っているが、組長方は内密に事を進め収めるつもりでいる」
「間者……」
「先日私達を襲った奴らも長州藩だった。その仲間が新選組内にいるということだ。薩長とは思想が違う。それもあってか対立している」
「大変ですね、芹沢鴨が裏切らなければ仲間を疑うこともしなくて済んだのに」
そう口に出して、前川が顔をしかめたのに気付く。
「裏切った……?」
「芹沢鴨は薩長を裏切ったのでしょう?」
あの訛りの持ち主が長州藩だとしたら、芹沢鴨は長州藩の出。
長州藩が裏切った芹沢鴨を許せなくて、新選組を目の敵にしているのだ。
間者として入れば裏切り者を討てる、そういうことだろう。
「芹沢局長は、薩長とは何の関わりもないはずだ」
