――――かぁ……ん………
どこかで刃がまじわう音がする。
と、少し後誰かが走って来るのが見えて、懐に手をいれる。
「哀音」
前川が息を荒くしながらやってきた。
懐から手を出し一人なのを確認すると橋に背を向けた。
「今、お仕事中なのでしょう?そんな時に抜け出して支障はないのですか?」
「見つけた瞬間に数人が逃げ出した。今追っているこの時にしか、橋には来れないからだ」
「新選組は大変ですね」
「そんな話をしに、ここに来た訳ではない。…本題に入ろう」
相変わらずかたい人だ。時間もそうないから余計に。
口元に笑みを見せ、前川に向き合った。
「交渉に、応じます」
