-アイネ-



「……前川」






「はい、何でしょう」





「平隊士のお前にこんな話は良くなかったと思うが、普通の隊士なら話すことはなかったとも思う。特別扱いをする訳じゃねぇ、ただお前に信頼はある。このことは他に言うなよ」









間者がいると密かに騒がれている中、信頼を寄せてもらえるのは有難いことだ。



肩に置かれた手に、頭を下げる。笑っていた原田の顔が僅かに曇った気がした。




原田に礼を言い部屋を出ると、外は真っ暗であった。寒さに身を震わせ、自室に戻ろうと足を進める。







今日は色々なことがあった。体を休めて頭を冷やそう。哀音があの話を受け入れるよう、今聞いた話をしてもいい。そうすることで、哀音が人を殺める数が少なくなるのなら。例え裏切り者だと非難されても新選組を守る行為と信じて動くのみだ。








自室―――といっても大部屋なので自分のというのは違うかもしれない―――につくと、ゆっくり息をつく。








「前川、今空いてるか?」





「なんだ?」







入るなり声をかけられ、それが哀音に一太刀くらわされた1人、宮田だと分かるとそのまま足を進める。




宮田は後に入ってきた隊士ではあるが、稽古をしている姿を見ていると筋がいいと褒められているのが印象として強い。負けず嫌いの性格から食らいつくように戦うのでやりにくい相手だとは思う。









「……愛音の居場所は分かったか」