キュッ、キュキュッ。ダンッ!ダンッ!

…すぱん…っ!


人気も無くなった体育館で毎日のように聞こえる音がある。
もう、すっかり陽も落ちて暗いのに。

そして私は毎日のようにその音を聞きに行く。陽も落ちて暗いのに、だ。
だって、今だけは私が独り占め出来るのだから。

音を立てている彼…バスケ部のイケメンキャプテン、御山 翔くんは、モテる。校内の女子の半数は彼に恋をしているんじゃないかと思う。
…私も、その中の一人なのだけど。

今、体育館には彼一人だけ。扉はいつも開いている。
そこから少し離れた渡り廊下で彼を眺める私も、一人きり。
だから独り占め。

…でも、この優越感は束の間で、この距離も縮まることはないんだろうな、って思ってる。