あたしの机の目の前に後ろ向きで座って
宿題をせっせと写すこの男。
ーー奏多(かなた)という名前のこの男が、好きで、好きで、たまらない。
「ちょっと、つんつん頭が腕に当たる!
ほらノートと顔が近いんだよ」
「うるせぇな。小姑が」
「自分の席に持って行けばいいでしょ」
奏多はこう言われても、自分の席に戻ろうとはしない。
…自分の嫌味ったらしい性格が嫌い。
「あと一問…て、ハナコ、ここ間違えてるじゃん」
「え?あ、本当だ。掛け算間違えた」
ダッセーな、お前。
ノートから目を離さずに、奏多も嫌味を一つ。
この時間がたまらなく、好き。


