キミの翼が羽ばたく時。

「でも、雫は強いから、自分だけでも生きられるよね。」
お兄ちゃんが小さな手で止めどなくこぼれる涙を拭う。
「大丈夫、私は大丈夫だよ。」
私がそう言ってさしのべた手は、お兄ちゃんよりも大きかった。
いつのまにか幼い私は、現在の私に変わっていた。
「雫、それまでは僕が雫を守るから。」
お兄ちゃんが涙をいっぱいためて瞳で私を見上げる。
「あ…」
「ずっとずっと、守るから。」
お兄ちゃんがニコッと笑い、私の手を引き言う。
「雫、翼、いくわよ~」
懐かしい、母の声。
「いこう!」
お兄ちゃんはそう言うとかけだしていった。
「うん…!」
私はそう言い、かけだしていった。