ミッドナイトインバースデイ



「満月と、ハロウィンナイトが重なるせいですね」
「どーいうこと?それ」
「偶然と波長が一致すれば、おそらく"ただの人間"である紫織が引きずりこまれたとしてもおかしくはない」
「……あの、よくわからないけれど。そろそろ失礼させて頂きます」

 ハルはこてりと首を傾げた。シノブの絶対的な美貌とは異なる、可愛らしい顔立ちをしている。見た目の割に、シノブよりもよっぽど大人びた口調をするものだから、年齢がはかれない。こんな世間から隔離された洋館でふたり。一体どういう関係なのだろう、少し気になった。

「紅茶、ご馳走さまでした」
「ハルの淹れた紅茶は絶品でしょ」
「うん。とっても美味しかった」

 褒めてやれば、シノブは心底嬉しそうに顔を歪めた。くるくると表情をよく変える男だ。他愛もない話をしていると、ハルが思案気な様子で口を挟んだ。

「帰れるといいんですが」
「…え?どういうこと?」
「最初に言いました。この場所は、本来"ただの人間"が来れる場所ではない。偶然と波長が、磁石のように引き寄せるんです。まあ、滅多にあることじゃありませんが。帰れれば、いいと思います。扉を開けて、霧を抜けて、洋館からは一本道ですから」

 冗談のようなことを、至極真面目な顔をして言うハルに言葉を失う。SFといった類は疎かったし、それこそオカルトなんて大嫌いだ。そもそも紫織は目に見えないものは信じない主義である。飲み会で、こんな話をされた日には驚いた振りして内心鼻で笑うだろうし、疲れているのかなと少しだけ心配もするだろう。