明るい太陽に向けて、寮の前で大きく伸びをするママ。
広間でのんびりとお茶を飲むレイコは、これまた大きな口を開けて欠伸をする。

「眠たそうね?」

ママが新聞片手に広間に入って来て、レイコは眠たそうにしながらママに向かって言った。

「今日から授業再開なんだって?」

「ええ。何だか嬉しそうに出て行ったわよ」

「ふーん」

「なに?」

「あれからどう?」

「どうって?」

「美沙よ。相変わらずあの子とは会ってるみたいだげど」

「うーん。上手くいってるんじゃない?」

「そんな訳ないでしょ? むこうはお見合いするんだから」

「そう、よねぇ…?」




久しぶりに見た大学の校門には、再開を待ち兼ねていた者やそうでない者もいるだろうが、その他に報道陣の姿もあった。
学生達は普段通りといった感じであえて報道陣を避けるような事はなく、唐突に質問されても素直に答えていた。

「以前の事故に対する不安は有りませんか?」

「不安と言うか、最後まで歌えなかった悔しさは有ります!」

「あっ、貴女があの事故の時に歌ってらっしゃった」

「そうでーす。由依って言います」

インタビューを受ける由依を発見し、カメラに映らない所で驚き立ち止まる玲美。

「玲美! お早う」

美沙が玲美と合流して、美沙もインタビューを受ける由依に気づく。

「由依さん。事故の瞬間はどう思いましたか?」

「そんな事より。今月末に地元の緑地公園で野外ライブやる事になったので」

「あ、あの」

「良かったら見に来て下さい!」

ばっちり宣伝が終わったところで、由依が美沙と玲美に気付いて手を振って招いた。

「マコちゃん! 玲美! こっちこっち!」

「えっ、ちょっ」

拒む美沙と玲美にカメラが向けられて驚く二人を、テレビクルーが激しいジェスチャーで由依の元へと誘導する。

「二人もバンドのメンバーでーす。他にも何組か出る予定なので、絶対来て下さい!」

「よ、宜しくお願いします!」

「あ、あのう、由依さんのお友達ですね?」

「いいえ」

「なんでやねん! もうええわ!」

「どうも、失礼しましたー!」

「逃げろー!!」

「え、あ、ちょっと!」

三人は大学のキャンパスへと猛ダッシュで逃げて行った。