ぐしゃぐしゃになったプリンの残骸を集める玲美は、とても悲しそうに瞳に涙を浮かべていた。

「玲美。これも」

由依が靴下を降って中に詰まったプリンを落とすと、玲美はあり得ないといった表情で固まり、その頬を大粒の涙が流れた。

「お前らバチ当たるぞ」

「えー? …やったのルカさんだし」

そう由依は呟きながらルカの方を見ると、そこには唇が隠れる程に青のりを付着させたルカがいた。

「全部食べてるし」

「ルカさん。お鼻にも、海苔が…」

「はぁ? 何で鼻に付くんだよ?」

「ホントに付いてるよ」

「そんな訳ないだろ」

認めないルカはトイレに行くと言って立ち上がるが、由依がそれを阻止するように言った。

「ここで取ったらいいのに? 恥ずかしがらないで、さ」

語尾を強めるその意味深な言い方にムッとするルカ。

「よーし分かった。…今に見てろ」

少しびびった様子の由依ではあったが、ソファーに戻ったルカが普通に曲を入れて歌い出した事にほっと胸を撫で下ろし、ルカの指示で部屋を真っ暗にして盛り上がりだした。
曲も一回りして、ルカがドリンクを飲みたいと自ら注文し、程なく店員がやって来るのだが、その手にはドリンクの他にパスタも持っていた。

「ナポリタン旨いんだって」

「へぇー。何か黒くない?」

「部屋が暗いからだろ? ていうか、さっきの詫びだ」

「えっ?」

「食べていいぞ」

「ホントに?」

そのパスタは確かに少し黒かったが、赤い色もちゃんとあった事で由依はそれほど気にせず、鼻に青のりを付けたルカに薦められるまま、そのパスタを嬉しそうに食べた。

「ウギャァー!! 辛い! 辛い! カラーイ!!」

「タバスコとイカスミの、ミックスパスタじゃー!」

涙を流し悶絶する由依の口は真っ黒で、そんな由依を見てルカは腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。

「ギャハハ! 次は…」

ルカの視線が由依から玲美へと移り、それを感じた玲美はソファーの上を後ずさる。