「何なんだ、あの男は……」
 ようやく落ち着いた彼女は、サディの腕の中ですすり泣いている。

 未婚の女性の耳を噛むなど、まず有り得ない行為だ。

「じゃ、まず情報を整理しようぜ」
 話を始めようとしたケイディスを見て、サディは、
「スクーヴァル、少し寝ていなさい」
 一人置いていくのもためらわれたが、聞かせるわけにもいかない。
 女官を呼ぼうとしたとき、

「待て。そいつの話だ。
 そいつには聞く権利も義務もある」

 このケイディスも、サディの能力が通じる相手ではない。
 加えてこの男が言うからには逆らえない。

「そいつはどこまで知ってんだ?」
「……何も……」

 リガスの言葉に呆れたように息をつき、
「じゃあ、まず兄貴の話からだ」


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