後ろを振り返り初めて相手に顔を見せる。
私は無理やり口角を上げ歯を出してにっと笑ってみせた。
……でもきっと笑えてない。
体は正直だ。
だって私の目からは涙がずっとこぼれ落ちているから。
「………ごめん」
私が相手に背を向け歩き出した時、確かにそれは聞こえた。
周りの騒音にかき消され本当に微かにしか聞こえなかったけど。
"トナカイくんは悪くないよ"
心の中でそう呟く。
もう終わりにするから。
もう会わないことにするから。
このまま会わずに時が経てばきっとトナカイくんの記憶から私という存在は消えていくだろう。
そしてそれは、私の記憶からも………。
今までのことは全部忘れて、
私は部活で生きる。
部活に全てを捧げる。
トナカイくんに、私の恋に、
………さようなら。