声を荒げてそう言うと、悠里ちゃんは大きな目を丸くして私を見つめた。
「私が恋をしたら意外?がっかり?似合わない?私はかっこいいってイメージが定着してるから??
私……見た目は男っぽいかもしれないけど心はちゃんと女だよ!? たくさん悩むし恋だってしたいよ……!
悪いけど私、悠里ちゃんが思ってたような人間じゃないからっ!!!」
ダン、とわざとらしく音を鳴らして私は勢いよくデパートから飛び出した。
外に出た瞬間、冬の冷たい空気が私を襲う。
一瞬身震いするけど、走っている足は止めなかった。
足を止めたらきっと涙が溢れちゃうから。
……なのに。
誰かの手によってそれは遮られた。
その手は私の右手首をがっしりと掴んでいて、私が走ろうとするのを静止している。
茶色のもふもふの手。
こんなの、顔を見なくても分かる。
「………ねぇ、痛い。放してよ」