「トナカイくん、あなたは誰……?」
その瞬間冬の冷たい風が私の頬を撫でる。
「気になってたんだ。トナカイくんは私の顔も声も知っているのに、私はトナカイくんの顔も声も知らない。
だから……その着ぐるみ取ってよ。顔を見て話したい。
トナカイくんのこと、知りたい」
突然こんなこと言われてもトナカイくんはきっと困惑するだけだろう。
でも今の私には感情を抑えることがー…
「〜ッッ!!!」
ドサッという効果音と共に地面に落下したカゴとキャンディー。
その音に驚いてえ、とトナカイくんを見るとおののくような目で私を見ていた。
そんなに、驚くほど嫌だった?
………迷惑だった?
やっぱり私ーー………
「あ………な、何言ってんだろね、私! ごめんね、突然変なこと言っちゃって!私みたいな奴にこんなこと言われても迷惑だよね、そりゃ嫌だよねッ!! ……じゃあ私帰るからっ……」
早口でそれだけ言うと私はトナカイくんの返事も聞かないままに走り出す。
走ってる最中、一瞬だけトナカイくんの方を振り返るとさっきまで私と話していた場所に呆然と立ち尽くしていた。