「わたしね、眠っているあいだに夢を見ていたみたい」

「夢…?」

晴海が首を傾げると、愛梨はゆっくりと頷いた。

「切れ切れで朧げな部分も多いのだけど…貴女が陸を何度も助けてくれたことをわたしは知ってる。…陸を通じてわたしも貴女を見ていたような感覚に近いかしら」

陸と一緒に、私を見ていた――?

「それって…一体……」

「…もしかすると、母さんは俺と意識をある程度共有してたのかも知れないんだよ。母さんみたいな純血の能力者は希に、自分と同じ属性の能力者と同調することが出来るらしくて」

「そうね。四六時中、まではないけど…良く陸の傍にいる夢を見ているような感じだったわ。でも、そのせいで私自身はずっと眠り続けてしまっていたようね…」

残された周や京のことを想ってか、愛梨は少し憂いを含んだ表情で俯いた。

「…それに、わたしには見ているだけで何も出来なかった…記憶を奪われた陸と同調し過ぎて、自分の身体への戻り方も解らなくなってしまって。この子が苦しんでいても、何もしてあげられないのがつらかった」

愛梨の手が、今度は晴海の両手を取った。

「でも、貴女のお父様が陸を逃がしてくれた。貴女のお母様と貴女が陸を助けてくれた。そして貴女が、此処まで陸を連れてきてくれたでしょう」

その笑顔に、どきりと胸が高鳴る。

愛梨の柔らかな微笑みは、不思議と京と良く似ていた。

「だから陸もわたしも、此処に戻って来られたのよ。有難う、晴海ちゃん」

「で…でも両親はともかく、私は何も……」

「そんなことないわ。陸はいつだって、貴女がいてくれたからこそ前に進んで来れたのよ」

「母さん」