愛梨は、夕夏よりは背はあったがやはり小柄で、少女のような愛らしさと大人の女性の美しさを兼ね備えていた。

自分の母――仄もよく若くて美人だと評されるが、母とは全く別系統の美貌の持ち主だ。

「は…初めまして」

陸に連れられて訪れた愛梨の寝室で、晴海が少し緊張気味に一礼をすると愛梨は寝台に腰掛けたまま優しく微笑んだ。

「こんな格好でごめんなさいね。わたしは大丈夫だって言うのに、みんながまだ無理するなって聞かなくて」

「いえっ…」

病み上がりの身だ、周囲が心配するのも無理はない。

愛梨と向かい合う位置に置かれた椅子へ座るよう促されて、晴海は小さく会釈してからそれに腰掛けた。

陸は、椅子には座らず晴海の傍らに立ったままだった。

「…私、ずっと愛梨さんにお逢いしてみたかったんです。でもこんなに早く逢って頂けるなんて」

「わたしも、早く貴女に逢いたかったのよ。だから、無理を言ってこうして逢わせて貰ったの。よく、顔を見せて…?」

「は…はい」

愛梨はふと立ち上がると、その華奢な両手にやんわりと頬を包まれた。

「あ……あの…」

陸に良く似た眼差しに注視され、何だか顔が赤くなる。

「…やっぱり、実際に見る貴女のほうが可愛いわね」

「…?」

実際に、というのはどういう意味かと戸惑う晴海に、愛梨は少し意味深に笑って見せた。