いとしいこどもたちに祝福を【後編】

周はゆっくりと美月のほうを振り向いた。

やはり、避けられないのか――

「お二人共、何を言い出されるかと思えばっ…馬鹿馬鹿しいですわね、四年前に私が陸様を陥れたという証拠でもお有りですの?」

美月は周の問い掛けには答えず、高圧的に二人を嘲笑った。

「どうせ俺の証言だけじゃ、あんたは白を切り通すだろ?」

「元より私を嫌っていらっしゃる京様と、陸様が結託して私を排斥しようとすることくらい、容易に考えられそうですもの。全く信憑性がございませんわ」

「美月…!!」

咎めるような視線を向けても、美月はものともしなかった。

いや、必死でそう取り繕っているだけなのかも知れない。

「…前から僕の留守中に色々やらかしてることは解ってるんだよ?月虹も最初から僕が単独で潜入すると知っていたように、陸を洗脳して仕向けてきた。けど悠梨さんが来ることは父さんにも言わなかったから、予測外だったんだろ?」

対する京は、表情を変えず囁くように言葉を続けた。

「お前の言う証拠なんか、いくらでも用意出来るよ。例えばお前が消したつもりで安心してる、薄暮の上層部との通信履歴だとかね」

「なっ…?!」

「せめて父さんの前なら、素直に口を割るかと思ったんだけどな…貴女の父に対する忠誠心なんて、所詮そんなものか」

京は侮蔑の眼差しで、美月を鋭く睨み付けた。

「美、月…」

周は思わずその名を口にしたが、何も言えなかった。

「父さんは人を疑わない性格だから、気付かれないとでも思ったのか?それとも自分なら、何をしでかしても許されるとでも?」