いとしいこどもたちに祝福を【後編】

二人は不意に笑顔を打ち消すと、周よりも後方に立つ存在に鋭い視線を浴びせた。

「お前は母さんに近付くな。…美月」

「…!」

周の後に続いていた美月が、驚愕して目を見開く。

「な…お二人共、何を仰るかと思えばっ」

「四年前、貴女は陸に嘘を教えただろう?僕が、陸や母さんを疎ましく思っていると」

狼狽する美月の言葉を遮って、京が低い声で告げた。

「京…」

「…っ僕の生みの母を、母さんが殺しただなんて馬鹿げた作り話もしたらしいね。僕や父さんが聞いたら笑ってしまうような嘘をっ…よくも陸に吹き込んでくれたよ」

冷静な口調ながら、京の声色は激しい怒気を含んでいた。

「…あのとき、俺は馬鹿正直にもあんたの言うことを完全に信じたよ。その話を兄さんが違うと否定しても、一度そうだと思い込んだ俺は信じようともしなかった」

陸は真っ直ぐに美月を見据えて、京とは対照的に無感情に言葉を紡いだ。

「すっかりあんたの嘘に翻弄されて、家族から孤立した俺が独りになったところを付け込まれた結果が…この有様だ」

左肩を押さえて、陸は不快げに目を細めた。

「母さんが僕の“母様”を邪魔だと思ってたって…?それを知って、僕が母さんや陸を憎んでるだってっ…?!僕たちを邪魔だと思ってるのは、お前だろう!!」

「…!!」

語気を強めた京の言葉に、美月はびくりと後退りした。

「美月。本当に…子供たちの言う通り、なのか…?」