いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「ううんっ……今はもう、怖い夢は見ないんだ…っ」

ずっとずっと自身を悩ませていた悪夢からは、晴海が救ってくれた。

一度は引き戻されかけた闇からも、彼女が兄と共に引き上げてくれた。

今、泣いてるのは――そう続けようとしたが、声が詰まって上手く話すことができない。

すると愛梨の手に、やんわりと髪を撫でられた。

「陸は、若い頃のお父さんに似てきたのね…」

「!」

柔らかく微笑んだ愛梨の言葉に、どきりと胸が高鳴る。

眼の色彩以外で、父の面影を重ねられたことは今まで一度もなかった。

髪色や線の細さの印象が先立つせいか、誰もが自分の容貌を母の姿と照らし合わせた。

「ほんとにっ…?誰だって、俺のこと母さんにそっくりだって言うのに…」

だから、母から告げられたその言葉は、素直に嬉しかった。

「だって陸は、私とお父さんの子供だもの…だから、私にも似てるのよ」

「父さんと、母さんの」

二人の子供――

そうだ、記憶のない頃には不確かな感覚しか、頼れるものがなかったけれど。

今は確かに自覚と自信を持って、自分は二人の息子だと言える。

「そう、だよねっ……有難う、母さん…」