いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「はる、やっぱり今日は母さんと一緒に寝よう」

そう提案すると、娘は申し訳なさそうに俯いた。

「……ごめん、なさい…」

「何も謝る必要なんかないだろ。母さんが寂しくてそうして欲しいんだから」

「でも…母さんは私みたいに泣いたりしない…」

「母さんは大人だからね、はるに見付からないように上手くやってるだけさ」

「………」

――夫と息子が“いなくなって”から早数ヶ月。

最初の数十日間に比べれば、娘は随分と明るくなった。

当初は碌に食事も摂れずにいたが最近は少しずつ食べられるようになったし、仄が何か話を振れば、ぎこちないながらも笑顔を浮かべて返答してくれる。

だが、夜になると――なかなか寝付けない、眠りが浅いといった症状が酷く、なかなか改善に至らない。

食事や会話に関しては、本人も仄に心配をかけまいと意識して改善に努めようとしているようだが。

睡眠については、やはり意識していても難しいらしい。

その上、娘を悩ませているのは――夫と息子が帰ってこないと知った夜、一際激しく降っていた雨だ。

仄と娘が暮らしているこの秋雨は元々降雨量の多い国で、特に夜更けや明け方には頻繁に俄か雨が降る。

その雨音を耳にすると、娘は二人がいなくなってしまった日のことを思い出して魘される、若しくは目を覚ましてしまう。

だから娘は、つい最近まで仄と一緒に眠っていた。

仄は幼少の頃から身体の弱い娘が心配だったのだが、本人はそれを負い目に感じているらしく、ふと数日前から一人で眠ると言い出したのだ。