――ぽつぽつと、夜雨が屋根を打つ音がし始める。
すると、それを合図にするかのように扉の向こう側から弱々しい呻き声が漏れ聞こえてきて、仄は肩を小さく落とした。
「…やっぱ、今日も駄目か」
やっと眠ってくれたところだったのに――
立ち去ったばかりの室内に戻り、仄は魘されるように布団の中で震えている少女を抱き起こす。
「はる」
そうして、夢と現の狭間で苦しむ娘の髪を宥めるように撫でてやった。
「…はる、大丈夫だよ。母さんが傍にいる」
だが、それでも娘はなかなか泣き止まない。
「父さん…ふゆちゃん……」
譫言(うわごと)で娘が呟いた言葉に、ずきんと胸が痛む。
「はる…」
仄は思わず手を止めて、その身体を強く抱き締めた。
自分一人では駄目なのだと解っていても、仄にはそうすることしか出来なくて。
娘はやっと徐々に落ち着きを取り戻し始めてくれて、仄の胸元にそろりと頬を擦り寄せた。
「かあ、さん…?」
目を覚ました娘の、自身と同じ色をした碧い眼と目が合う。
まだ不安げな面持ちをした娘に向かって、仄はやんわりと微笑んで見せた。
すると、それを合図にするかのように扉の向こう側から弱々しい呻き声が漏れ聞こえてきて、仄は肩を小さく落とした。
「…やっぱ、今日も駄目か」
やっと眠ってくれたところだったのに――
立ち去ったばかりの室内に戻り、仄は魘されるように布団の中で震えている少女を抱き起こす。
「はる」
そうして、夢と現の狭間で苦しむ娘の髪を宥めるように撫でてやった。
「…はる、大丈夫だよ。母さんが傍にいる」
だが、それでも娘はなかなか泣き止まない。
「父さん…ふゆちゃん……」
譫言(うわごと)で娘が呟いた言葉に、ずきんと胸が痛む。
「はる…」
仄は思わず手を止めて、その身体を強く抱き締めた。
自分一人では駄目なのだと解っていても、仄にはそうすることしか出来なくて。
娘はやっと徐々に落ち着きを取り戻し始めてくれて、仄の胸元にそろりと頬を擦り寄せた。
「かあ、さん…?」
目を覚ました娘の、自身と同じ色をした碧い眼と目が合う。
まだ不安げな面持ちをした娘に向かって、仄はやんわりと微笑んで見せた。


