「――ぷはっ…!」

眼を開けていることすら儘ならない程の強風が不意に止み、やっとのことで大きく息をつく。

すると周りの景色は一変しており、目の前には暖かな陽光に照らされた花園が広がっていた。

「此処は…」

「大丈夫か?」

「!」

頭上から掛けられた声に、ふと自身と風弓を抱えたままの男の顔を見上げる。

「ぁ……えーと、はい」

光を弾く白銀の髪に、薄紅色の瞳――そして女性的な美貌は見知ったある顔に良く似ている。

「…ゆり、さん?」

するとすぐ傍で、不思議そうに男性へ問い掛ける声が聞こえてきた。

声の方を振り向くと、首を傾げてじっとこちらを眺めている陸の姿があった。

「よう、陸。記憶がないって聞いてた筈だが、もう俺が解るのか」

無表情のままひらひらと手を振る男性にそう訊かれ、陸はかくんと頷いた。

「じゃあこの二人に、俺のことを説明してやってくれ」

男性は晴海と風弓を柔らかな草の上に下ろすと、大きく腕を伸ばして深呼吸した。

陸は少し戸惑いがちに眼を泳がせたが、再び首を縦に振ってこちらを見つめ直した。

「…晴、風弓。この人は、鈴代(すずしろ)悠梨さんって言って、母さんのお兄さん……つまり俺の伯父さんだよ」