いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「お兄ちゃん、苦しい…?じゃあまた俺を殴ればいいだろっ?あのときみたいにさ!」

「おまえ、を……?」

京は緩慢な動きで両手を伸ばすと、陸の頬に掌を宛がった。

「そうだよ。四年前みたいに――」

挑発するように陸は言葉を続けたが、京は陸の頬をゆっくりと優しく撫でた。

「っ…?!なに、やって…」

その行動に、陸は不意にびくんと身を震わせて動揺の色を見せる。

「四年、前から…ずっと…お前に謝り、たくて……だけど、帰ってきたお前は記憶を失くしてたから…だから……怖くてあのときのことに触れられなかった…」

京は震える手を握り締めると、つらそうに陸の顔を見つめた。

「痛かった、よな……ごめんな、陸…」

そしてそのまま、するりと両腕を下ろしてしまった。

「なん、でだよ…っ!俺のこと、嫌いなんだろ!?だったら早く殴れよ…!!でないとお兄ちゃんが死んじゃうよっ?!」

陸は困惑した様子で、両手に込めている力を少し緩めた。

京の言葉に、心が揺らいでいるのか――

(陸…!もしかして、洗脳が解け掛かってる……?!)

「何をやっている、陸!!また兄の言葉に惑わされるのか?!」

「…!惑わされ、る……」

「そうだ!お前と兄は所詮腹違い、跡目争いの刻が迫れば邪魔なお前は兄に蔑ろにされるぞ?!」