いとしいこどもたちに祝福を【後編】

陸の見ていない打算も策略も何の関係のない場で、自分は京の、陸へ対する心情の吐露を見聞きしている。

それに、もし本当に京が陸の存在を邪魔だと思っているなら、陸を取り戻すために単身で此処までやって来たりはしまい。

咲良も、幼い頃の二人は仲の良い兄弟だったと言っていた。

仮に先程の発言が陸の本心から出た言葉なら、陸は京のことを誤解している――

「急に勢いがなくなったな、霊奈!!」

香也の嘲笑が聞こえて弾かれたように顔を上げると、二人に接近戦に持ち込まれ京は防戦一方に回っていた。

「お兄ちゃん、今更俺を殴るのが怖いの?」

「くっ…」

京が反撃を躊躇しているのは、陸に攻撃が当たることを恐れてか。

「…僕が単に逃げ回っているだけだと思ったのか?甘いよ」

一旦後方へ退いた京がぱちんと指を鳴らすと、香也と陸の身体の周囲に銀色の光が発生した。

「なっ…?!」

「これで二人共、暫くは魔力も霊力も使えない」

どうやらあの光は、二人の力を一時的に抑えるものらしい。

それに一瞬戸惑いを見せた香也を、京は突風を浴びせて弾き飛ばした。

「ち…!小賢しい真似しやがってっ…陸!!」

「!」

香也が声を上げた瞬間、京の死角に回り込んだ陸は兄の脇腹に蹴りを叩き込んだ。