いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「何をするにも、俺の行動を制限ばっかりして。こっちだってお兄ちゃんと仲良しごっこを続けるのは疲れたよ」

「陸…!」

陸が呆然としている京に向けて翳した掌が、真っ白な光に包まれる。

「京さん、逃げてっ!!」

「っは…」

晴海の叫び声で我に返った京は、紙一重のところで陸の繰り出した真空波の渦から逃れた。

すると陸が不機嫌そうにくるりとこちらを振り向く。

「…邪魔、するなよ」

瞬間、ぞくりと背筋に寒気がした。

その両眼は確かに晴海を映している筈なのに、まるで何処か彼方の空虚を視ているかのようだ。

「止せ陸…!お前の相手は僕だ!!」

だが京の声に反応して、陸は反射的にそちらへ向き直った。

「晴海ちゃん、今の陸に近付くな!今もし君を傷付けたら、この子は正気に戻ったとき酷く苦しむことになるっ…」

「正気に戻ったら?言った筈ですよ、その子は自分の感情に素直になっただけだと」

京の心を容赦なく抉るような、あんな言葉が、陸の本心?

違う――そんな筈はない。

初めて逢ったとき、大切なものを失くしてしまったと哀しげに話してくれた、京。

陸のこととなると冷静でいられなくなる、と恥ずかしそうに笑っていた。