陸がこちらへ向けて放った突風が、咄嗟に京が張った障壁に弾かれた音だった。

息を付く間もなく、続いて香也が放った無数の巨石が降り注ぐ。

だがそれも、京の目前で悉く砕け散って砂のように消えた。

香也の攻撃を京がどのように防いだのか全く見えなかったのだが、傍らの風弓は小さく「すっげえ」と呟いた。

「随分なご挨拶だね…隣の彼はともかく、そんな不作法教えた覚えはないよ?陸」

怒気を含んだ声色と視線を浴びせられても尚、如月は全く怯(ひる)まず薄ら笑いを浮かべている。

「これはとんだご無礼を。しかし流石は霊奈の血統を受け継ぐ御方だ、この二人を纏めて相手取っても不足はないらしい」

確かに京は強い、そのことに対しては心配要らない。

だが慶夜は夕夏と賢夜の姿を目にしても、いくら二人が懸命に呼び掛けても正気には戻らなかった。

だったら、陸は――?

「香也、陸。本気で行きなさい」

「!やめ…」

次の瞬間、地鳴りと共に京の足元の床板が崩壊して、巨大な石柱がまるで花が開くように地下から幾重にも突き出てきた。

「京さんっ!!」

京の姿は石柱に呑まれて見えなくなったが、更に其処へ間髪を入れず陸が雷撃を何本も打ち込む。

ばちばちと雷光が唸りながら目の前に迫るのを呆然と眺めていると、風弓に腕を掴まれて後方に引き寄せられた。

「姉ちゃん、危ねえっ!」

「ふ、ゆみ…」