いとしいこどもたちに祝福を【後編】

「…!」

京に微笑まれ、風弓は恥ずかしそうに俯いてしまった。

「君は能力を封じられているようだし、それに…その両足を早くきちんと治療したほうがいい」

――両足?

何のことか解らず京の顔を見つめると、少し険しい面持ちで京は言葉を続けた。

「さっきから風弓くんは座ったままだけど…立たないんじゃなくて立てないんだ。両足の腱を切られてる」

「!風弓…っ」

素早く振り向くと、風弓はばつの悪そうな顔つきで頷いた。

「自力で逃げらんないようにってな、実にご丁寧に両足とも切られちまった。んなことしなくたって逃げるつもりなんかないのにな」

風弓はそう言って苦笑いを浮かべたが、晴海は堪え切れず込み上げてきた涙を零した。

「姉ちゃん。俺は大丈夫だから」

泣かないで、と風弓の掌が頬を優しく撫でる。

受けた痛みや苦しみは、風弓のほうがずっと大きいのに―――

「晴海ちゃん、もしも此処で君に何かあったら風弓くんも陸も同じように悲しむ。だから、君たちは早く此処から逃げるんだ」

此処から先に進むには能力を持たない自分も、両足を潰され能力を封じられた風弓も、京の足手纏いとなる。

それは解っている。

「でも、京さん…!」

「――その必要はありませんよ」